Webアクセシビリティ対応はどこまで義務?先に直すべき6つの実装項目と費用の目安を解説!

webアクセシビリティ対応は、義務の線を取り違えると予算の使い方を誤ります。急ぎの全面改修で予算を使い切ったり、反対に目の前の申し出への返答が遅れたりするためです。

2024年4月1日の改正障害者差別解消法の施行で、事業者に義務化されたのは、利用者からの申し出に応じる合理的配慮の提供です。サイト全体を規格に合わせる改修は、環境の整備として努力義務にとどまります。

この線引きを起点に、対象範囲の決め方、直す順番、検証と方針ページの作り方、費用と期間の目安までを、2026年10月時点の公的資料に沿って順にたどります。

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目次

第1章 webアクセシビリティ対応で最初に決める3つの範囲|対象ページ・目標レベル・期限

第1章 webアクセシビリティ対応で最初に決める3つの範囲|対象ページ・目標レベル・期限

着手の前に決めておきたいのは、どのページを、どの水準まで、いつまでに直すかの3点です。

1-1. webアクセシビリティ対応で取りこぼしを減らせる利用者と事業上の効果

Webアクセシビリティとは、年齢や障害の有無、利用環境にかかわらず、誰もがサイトの情報を得て操作できる状態を指します。

恩恵を受けるのは視覚障害のある人だけでなく、小さな文字が読みにくい高齢者や、片手しか使えない人も含まれます。国際的なガイドラインとしては、W3Cが公開するWCAGが広く使われています。

  • 申込・購入の途中離脱を減らせる:ラベルのない入力欄やマウス前提のメニューは、支援技術の利用者だけでなく高齢者にも操作しにくい箇所です
  • 官公庁や取引先の調達要件に応えやすくなる:デジタル庁のガイドブックでも、政府のシステム調達ではJIS X 8341-3:2016の適合レベルAAへの準拠を目標にするのが標準的な対応とされています

1-2. 全ページを一度に直さない|問い合わせ・購入・予約の導線から対象を切り出す

対象範囲は、ページ数ではなく、利用者が目的を果たすまでの導線単位で切り出すのが現実的です。

株式会社Grillが2025年4月〜2026年3月に支援した改修案件(製造業・小売業・BtoBサービス業のコーポレートサイト・ECサイト、N=14サイト)でも、この考え方が有効でした。診断で見つかった指摘箇所の約6割が、問い合わせ・購入・予約の3導線に集中していたためです。

サイトの種類最初に対象にする導線の例
コーポレートサイトトップ → サービス紹介 → 問い合わせフォーム → 送信完了
ECサイト商品一覧 → 商品詳細 → カート → 決済 → 注文完了
予約型のサービス料金・空き状況 → 予約カレンダー → 入力 → 確認画面

1-3. 目標はJIS X 8341-3:2016のAA準拠を基準に、WCAG 2.2の追加項目を上乗せする

国内規格のJIS X 8341-3:2016は、国際的なガイドラインであるWCAG(Web Content Accessibility Guidelines)2.0と一致する内容です。

デジタル庁「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」(デジタル社会推進標準ガイドラインに編入)は、原則として適合レベルAAへの適合を目標にするとしています。試験では、適合レベルAの達成基準25個とAAの13個のうち、サイトに当てはまるものが確認の対象です。

ただし同ガイドブックは、2016年の規格はスマートフォン対応まで考えると十分とは言い切れないと指摘しています。W3Cが2023年10月5日に初版を勧告したWCAG 2.2では、適合レベルAとAAの達成基準が6項目新設されました。

そこで目標は、JIS X 8341-3:2016のAA準拠を土台に、WCAG 2.1と2.2で増えたA・AAの達成基準を上乗せする形が現実的です。

1-4. リニューアル予定の有無で変わる単独改修と同時対応の分かれ目

期限の決め方は、サイトリニューアルの予定で変わります。1年以内にリニューアルを控えているなら、新サイトの要件にJISの適合レベルAA相当の達成基準を組み込み、同時に対応するほうが手戻りがありません。

リニューアルが1年以上先、または未定であれば、1-2で切り出した導線と共通部品だけを、先行してWCAG 2.2のAA相当に改修します。リニューアルと同時に進める場合は、「サイトリニューアルでSEO効果を最大化する5ステップ」で検索評価を落とさない手順も押さえておきましょう。

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第2章 法律上どこまで求められるのか|webアクセシビリティ対応の義務と努力義務を3層で整理

第2章 法律上どこまで求められるのか|webアクセシビリティ対応の義務と努力義務を3層で整理

「webアクセシビリティは義務化されたのか」という問いは、条文単位で見ると答えが分かれます。国内法の義務、国内法の努力義務、国外法の3層に分けると、自社に求められる範囲がはっきりします。

層根拠求められること性質
1障害者差別解消法 第8条第2項申し出に応じた合理的配慮の提供法的義務(不履行への直接の罰則規定なし)
2障害者差別解消法 第5条サイト改修を含む環境の整備努力義務
3EU指令2019/882(EAA)EU域内向けECサービス等のアクセシビリティ要件対象事業者に適用(2025年6月28日〜)

2-1. 2024年4月から義務になったのは「合理的配慮の提供」|申し出への個別対応

障害者差別解消法の第8条第2項は、障害者から社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があり、負担が過重でないときは、必要かつ合理的な配慮をしなければならないと定めています。内閣府によると、この改正法は2024年(令和6年)4月1日に施行されました。

合理的配慮のポイントは、「意思の表明があった場合」の個別対応である点です。

Webサイトに置き換えると、「PDFの内容をテキストで送ってほしい」「フォーム以外の方法で申し込みたい」といった申し出に応じることが、この義務の中身です。合理的配慮の義務とは、サイトを事前に作り替えることではなく、届いた申し出に応えることを指します。

2-2. ウェブサイトの改修は「環境の整備」として努力義務にとどまる

障害者差別解消法の第5条は、合理的配慮を的確に行うための必要な環境の整備に努めなければならないと定めています。

内閣府のポータルサイトは、環境の整備の例に情報アクセシビリティの向上を挙げています。デジタル庁のガイドブックも、ウェブアクセシビリティへの取り組みを、環境の整備として努力義務が課されたものと位置づけています。

つまり、サイトをJISやWCAGに合わせて改修すること自体は、2026年10月時点で障害者差別解消法上の義務ではありません。

ただし内閣府は、合理的配慮を必要とする人が多数見込まれる場合や、関係が長期にわたる場合は、その都度対応するより環境の整備が効果的だとしています。Webサイトはこの条件に当てはまります。

2-3. 罰則はあるのか|主務大臣の報告徴収と過料20万円の位置づけ

「対応しないと罰金という罰則がある」という説明を見かけますが、正確ではありません。障害者差別解消法の第12条により、主務大臣は特に必要があると認めるとき、事業者に報告を求めたり、助言・指導・勧告をしたりできます。

罰則を定めた第26条の「二十万円以下の過料」は、この報告をしない、または虚偽の報告をした場合に科されるものです。

合理的配慮をしなかったこと自体への罰則規定はなく、過料は罰金とも異なります。ただし申し出を放置し続ければ、報告の求めや助言・指導の対象になり得ます。

2-4. EU向けに販売するECは別枠|欧州アクセシビリティ法(EAA)の適用範囲

EUの欧州アクセシビリティ法(EAA、指令2019/882)は2025年6月28日から適用され、Webサイトやモバイル端末を通じたeコマースサービスも対象です。EU域内の消費者向けにECを運営する日本企業も、対象に入る可能性があります。

従業員10人未満で、年間売上高または貸借対照表の総額が200万ユーロ以下の零細企業は、サービスの提供者に限って要件が免除されます。国内の障害者差別解消法とは罰則の仕組みも異なるため、越境ECでは現地の法務の専門家に確認しておくと安心です。

第3章 合理的配慮の申し出に応える4ステップ|サイト改修より先に整えるwebアクセシビリティ対応の窓口

第3章 合理的配慮の申し出に応える4ステップ|サイト改修より先に整えるwebアクセシビリティ対応の窓口

障害者差別解消法が定める合理的配慮の義務の中身が申し出への対応である以上、事業者が最初に整えるべきはサイトの改修ではなく受付の仕組みです。申し出の受付から代替手段の提供、記録までを4つのステップで解説します。

3-1. 申し出を受け付ける連絡先をサイト上のどこに置くか

合理的配慮の申し出を受ける連絡先は、どのページからでも1〜2回の操作でたどり着ける場所に置きます。基本は、全ページ共通のフッターと、第7章で解説するウェブアクセシビリティ方針ページの2か所です。

フォームそのものが操作できないという申し出もあり得るため、連絡手段は1つに絞らないことが大切です。

  • 問い合わせフォーム:キーボードだけで送信まで完了できるものにする
  • メールアドレス:フォームが使えない場合の代わりになる
  • 電話番号:文字の入力が難しい人や高齢者の代わりになる。ただし電話だけにはしない

受付担当と一次回答の目安(例:3営業日以内)も、社内で先に決めておきます。

3-2. PDFしかない資料・画像だけの案内を求められたときの代替手段

多い申し出の1つが、画像やPDFでしか提供していない情報を読めないというものです。この場合、サイトを直す前でも、次のような代替手段で合理的配慮を提供できます。

  • PDFの内容をテキスト形式やWordファイルにしてメールで送る
  • 画像だけで掲載している営業時間や料金表を、文字に書き起こして返信する
  • 入力フォームが使えない場合、メールや電話で申し込みを受け付ける

大切なのは、申し出の目的を確かめ、それを達成できる方法を選ぶことです。

3-3. 「過重な負担」を理由に断る前に検討する代わりの提供方法

障害者差別解消法は、負担が過重でないときに合理的配慮を求めています。

内閣府のポータルサイトは、過重な負担を判断する際の考慮要素として、事務・事業への影響の程度、実現可能性の程度、費用・負担の程度、事務・事業規模、財政・財務状況の5つを挙げています。

「サイト全体をすぐに読み上げ対応にしてほしい」といった合理的配慮の申し出には、すぐ応えられない場合もあります。その場合でも内閣府は、理由を説明し、別のやり方を提案することも含めて話し合う「建設的対話」に努めることが大切だとしています。

必要な箇所をテキストで先に届けるなど、代わりの方法を示すのが現実的です。

3-4. 申し出の記録を残し、次の改修計画へつなげる運用

合理的配慮の申し出の内容と対応結果は、日付・ページ・困りごと・提供した代替手段の4項目で記録します。同じページへの申し出が重なれば、そこが環境の整備として改修すべき優先箇所です。

株式会社Grillの支援現場では、申し出が届いてから窓口を決めようとして、返信が遅れる場面が見られます。受付の窓口と記録の様式を先に決めておけば、個別の合理的配慮を素早く返せるうえ、積み上がった記録が次の改修計画の根拠になります。

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第4章 影響の大きい順に直すwebアクセシビリティ対応の実装6項目

第4章 影響の大きい順に直すwebアクセシビリティ対応の実装6項目

ここではWCAGの原則の順ではなく、申込や購入を止めてしまう影響の大きさで6項目を並べます。いずれもWCAG 2.2のAまたはAAに含まれる項目です。項目ごとに、確認方法と直し方をセットで示します。

4-1. キーボードだけで申込・購入まで完了できる操作設計【最優先】

確認方法:マウスから手を離し、Tabキーで前へ、Shift+Tabキーで後ろへ移動しながら、トップから申込完了まで進めるかを試します。フォーカスの位置が画面上で見えるかも確かめます。

1-2で触れた株式会社Grillの支援先14サイトでは、9サイトで、キーボードだけでは送信ボタンまで到達できない箇所が見つかりました。マウス操作が難しい高齢者にとっても、同じ箇所が障壁になります。

直し方:ボタンはbutton要素、リンクはa要素で実装し、フォーカス時の枠線をCSSで消さないようにします。

4-2. 画像・アイコンボタンに意味の通る代替テキストを入れる【最優先】

確認方法:チェックツールでalt属性の有無と中身を一覧にし、文字のないアイコンボタンを重点的に見ます。

直し方:代替テキストには、画像の見た目ではなく、その画像が果たす役割を書きます。虫眼鏡のアイコンなら「虫眼鏡」ではなく「検索」です。飾りの画像はaltを空にし、料金表のように情報の多い画像は本文にもテキストで書きます。

4-3. フォームのラベル表示と入力エラー箇所の伝え方【最優先】

確認方法:各欄に何を入れるかが画面上で分かるかを見ます。プレースホルダーだけの項目名は、入力を始めると消えるため要注意です。わざと誤った値で送信し、どの欄がなぜエラーなのかが文字で示されるかも試します。

直し方:label要素で項目名と入力欄を結び付け、必須項目は「必須」と文字で示します。エラーは欄の近くに、原因と直し方を文字で書きます。

フォームの改善は申込率にも直結するため、「ホームページ集客で先に直すのは流入とフォームのどちらか」もあわせて参考にしてください。

4-4. 文字と背景のコントラスト比4.5:1と、色だけに頼らない表示【優先】

WCAG 2.2の達成基準1.4.3は、テキストと背景のコントラスト比を4.5:1以上(大きな文字は3:1以上)と定めています。この基準はJIS X 8341-3:2016にも含まれています。デジタル庁のガイドブックも、この比率はチェックツールである程度確認できるとしています。

確認方法:開発者ツールや無料のコントラストチェッカーで比率を測ります。薄いグレーの注釈や、写真に重ねた白文字は基準を下回りやすい箇所です。

直し方:リンクには下線を付け、エラーや在庫切れも色だけでなく文字で示します。視力が低下した高齢者にも情報が届きます。

4-5. 見出し構造・ページタイトル・動画字幕の整備【優先】

スクリーンリーダーの利用者は、見出しをたどってページの全体像をつかみます。装飾目的の見出しタグや、階層の飛ばしは構造を崩します。

検索エンジンへの伝え方まで整えるなら、「SEOの構造化データを完全解説|JSON-LD実装手順」も参考になります。

  • 見出し:h1は1ページに1つとし、h2→h3の順で階層を守る
  • ページタイトル:title要素に「ページの内容|サイト名」の形で、ページごとに異なる名前を付ける
  • 動画の字幕:音声で説明している内容に字幕を付ける。聞き取りにくさを感じる高齢者にも役立つ

4-6. フォーカスが隠れない固定ヘッダーとタップ領域24px四方【WCAG 2.2で追加】

WCAG 2.2で新設された適合レベルAAの達成基準のうち、株式会社Grillの診断経験上、影響が出やすいのは2.4.11と2.5.8です。2.4.11は、キーボードのフォーカスを受けた要素が、制作側の配置したコンテンツで完全に隠れないことを求めます。

固定ヘッダーやCookieバナーの裏にフォーカスが潜る場合は、CSSのscroll-padding-topで余白を取ります。

2.5.8は、ポインタで操作する対象を24×24 CSSピクセル以上にすることを求めています(例外あり)。スマホのフッターに密集した小さなリンクは、押せる範囲を広げるか、間隔を空けて直します。

第5章 オーバーレイツールだけでは対応にならない|webアクセシビリティ対応の落とし穴4つ

第5章 オーバーレイツールだけでは対応にならない|webアクセシビリティ対応の落とし穴4つ

予算と時間をむだにしやすい4つの落とし穴を、避け方とあわせて紹介します。

5-1. ツールバー型プラグインでは直せない文書構造と代替テキスト

スクリプトを追加するだけで、文字拡大・読み上げ・配色切り替えのツールバーを表示できるサービスがあります。

こうしたアクセシビリティ・オーバーレイは、重要な課題に対応できない場合が多いとデジタル庁のガイドブックは指摘しています。具体的には、スクリーンリーダーが必要とするHTMLの文書構造の認識・補完と、代替コンテンツのない画像・動画への対応です。

同ガイドブックは、文字サイズ変更や読み上げのプラグインも非推奨としています。利用者はすでにOSやブラウザの支援技術を使っていることが多く、過剰対応になるためです。

5-2. 自動チェックツールで見つかる問題は全体の2〜3割にとどまる

無料のチェックツールでエラーが0件になっても、対応が完了したとはいえません。デジタル庁のガイドブックは、チェックツールで見つけられる問題はウェブアクセシビリティの問題の2割から3割程度だとしています。

WCAGの達成基準のうち、文字のコントラスト比のように数値で測れる項目はツールで確認できます。一方、ツールはalt属性があるかどうかは判定できても、その代替テキストが画像の役割を正しく説明しているかまでは判断できません。

キーボードで移動する順番が自然か、エラー文が分かりやすいかも同様です。同ガイドブックが人による確認を試験に欠かせないとするのはこのためです。

5-3. 「配慮」表記の方針だけを公開して試験をしない状態

方針ページに「JIS X 8341-3:2016に配慮しています」と書いたまま、一度も試験をしていないサイトがあります。試験をしなければ、どの達成基準を満たし、どこが未対応なのかを社内でも把握できません。

取引先からJISやWCAGへの準拠の状況を尋ねられても答えられず、改修の優先順位も決められない状態が続きます。表記の選び方は7-2で整理します。

5-4. CMSの更新作業で公開後に適合が崩れる典型パターン

改修した直後はWCAGの基準を満たしていても、日々の更新で問題は再び増えていきます。株式会社Grillは、改修を終えた製造業・小売業・BtoBサービス業のコーポレートサイト・ECサイトを公開6か月後に再診断しています(2025年4月〜2026年3月、N=8サイト)。

新たに見つかった問題の約7割は、CMSでの更新作業に起因していました。

典型的なのは、次の4つのパターンです。

  • 新しく追加した画像の代替テキストが空欄のまま公開される
  • 文字を目立たせるために、見出しタグを装飾として使う
  • 紙の資料をスキャンしたPDFを、テキスト版なしでそのまま掲載する
  • 写真の上に文字を重ねたバナーを追加し、コントラストが不足する

CMSの入力画面でaltを必須項目にする、見出しの使い方を更新マニュアルに書く、といった仕組みで多くは防げます。

WordPressで運用体制ごと見直したい場合は、「WordPressに強いおすすめ制作会社22選」も参考になります。

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第6章 対応状況を確かめる3段階の検証方法|自動チェック・手動操作・正式試験

第6章 対応状況を確かめる3段階の検証方法|自動チェック・手動操作・正式試験

改修の結果は、ツール・人の操作・規格に沿った試験の3段階で、手間と費用の小さい順に確かめます。

6-1. 無料ツールで行う一次チェック|miChecker・axe・Lighthouseの使い分け

一次チェックに使える代表的な無料ツールは、次の3つです。

ツール提供元向いている使い方
miChecker総務省公開中のページを、JISの達成基準ごとの問題に分けて確認する
axe(axe-core)Deque Systems(オープンソース)ブラウザの拡張機能として、開発中の画面をWCAGの基準でその場で確認する
LighthouseGoogle(Chromeの開発者ツールに搭載)表示速度やSEOの診断と一緒に、コントラストなどの傾向をつかむ

6-2. キーボード操作とスクリーンリーダーで実際に申込導線をたどる手順

ツールで拾えないWCAGの達成基準の問題は、第1章で切り出した導線を実際に操作して見つけます。

  1. STEP1:対象の導線を、トップページから完了画面まで書き出す
  2. STEP2:マウスを使わず、Tab・Enter・Space・矢印キーだけで導線をたどる
  3. STEP3:スクリーンリーダー(MacやiPhoneならVoiceOver、Windowsなら無料のNVDA)を起動し、画面を見ずに同じ導線をたどる
  4. STEP4:つまずいた箇所を、ページ・操作・起きた現象の3点で記録し、該当するJISの達成基準と対応づける

画面を見ずに操作すると、ボタン名が「ボタン」としか読まれない、エラーに気づけない、といった問題が見えてきます。

6-3. JIS X 8341-3:2016の試験実施ガイドラインに沿った正式試験の進め方

ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)が公開している「試験実施ガイドライン」に沿った試験の流れを要約すると、次のとおりです。

  • 対象範囲と、JIS X 8341-3:2016で目標とする適合レベルを決める
  • 対象範囲の中から、試験するページを選ぶ
  • JISの達成基準ごとに、満たしているかどうかを判定する
  • 判定結果を一覧にまとめ、方針ページで公開する

デジタル庁のガイドブックは、公開直前の試験では遅いとして、開発のマイルストーンごとに段階的な試験を組み込むよう勧めています。

第7章 ウェブアクセシビリティ方針ページの書き方|記載する6項目と「準拠・一部準拠・配慮」の使い分け

第7章 ウェブアクセシビリティ方針ページの書き方|記載する6項目と「準拠・一部準拠・配慮」の使い分け

ウェブアクセシビリティ方針は、どの範囲を、どの水準まで、いつまでに対応するかを利用者に示すページです。

7-1. 方針ページに書く6項目|対象範囲・目標レベル・期限・例外・試験結果・連絡先

方針ページには、次の6項目を載せます。

  1. 対象範囲:例「https://example.co.jp/ 配下のページ」
  2. 目標とする規格と適合レベル:例「JIS X 8341-3:2016の適合レベルAA(WCAG 2.2の追加項目を含む)」
  3. 対応期限:例「2027年3月末まで」
  4. 例外:対象外とするページや、対応が遅れるコンテンツ(過去に公開したPDFなど)
  5. 試験結果:試験日・対象ページ・適合レベルごとの結果の一覧へのリンク
  6. 連絡先:合理的配慮の申し出を受け付ける窓口(3-1参照)

方針の作成は、JIS X 8341-3:2016の附属書JAでは推奨という位置づけです。ただしデジタル庁のガイドブックによれば、次に説明する対応度の表記を使う場合は、方針の提示または公開が必須になります。

7-2. 「準拠」「一部準拠」「配慮」の表記を試験の有無で選び分ける

対応度を示す3つの表記は、JIS規格そのものではなく、WAICが独自に定義した表記方法です。デジタル庁のガイドブックが示す条件は、次のとおりです。

表記使える条件あわせて記載・公開するもの
準拠試験を行い、目標とする適合レベルの達成基準をすべて満たしている試験結果
一部準拠達成基準の一部を満たしている今後の対応方針
配慮試験の実施と公開の有無は問わない-

「配慮」は試験の有無を問わないため、5-3の状態でも表記としては誤りではありません。ただ、改修の途中では「一部準拠」で現状と今後の予定を示し、改修と試験を終えてから「準拠」に切り替える流れのほうが、取引先にも状況が伝わります。

試験をしていない段階で「準拠」と書くことはできません。

7-3. 試験結果の公開と年1回の見直しを回す更新ルール

総務省の「みんなの公共サイト運用ガイドライン(2024年版)」は公的機関向けの手順書ですが、取組の状況を1年に1回確認し、結果を公開することを推奨しています。民間企業でも、この運用ガイドラインの周期は見直しの目安になります。

  • 年1回:主要導線をJISに沿って試験し直し、方針ページの試験結果を差し替える
  • リニューアル・機能追加のとき:変更した範囲を、WCAG 2.2の追加項目も含めてその都度試験する
  • 申し出の振り返り:寄せられた合理的配慮の申し出の件数と対応内容を、次の目標や対象範囲に反映する

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第8章 費用と期間はサイト規模で変わる|webアクセシビリティ対応を自社で進めるか外注するかの判断基準

第8章 費用と期間はサイト規模で変わる|webアクセシビリティ対応を自社で進めるか外注するかの判断基準

webアクセシビリティ対応の費用は、診断・改修・試験のどこまでを行うかと、サイトの規模で大きく変わります。

8-1. サイト規模別に見る診断・改修・試験の費用と期間の目安

規模ごとの目安は次の表のとおりです。小規模の欄は、株式会社Grillが支援した製造業・小売業・BtoBサービス業の30ページ前後のコーポレートサイト(2025年4月〜2026年3月、N=6件)の実績です。診断から改修完了までは平均6週間でした。

サイトの規模期間の目安費用の考え方
小規模(30ページ前後)診断から改修まで6週間前後(株式会社Grillの支援実績)ページ数より、共通部品やテンプレートの数で決まりやすい
中規模(100ページ前後)正式試験で1か月弱、改修込みで2〜3か月(デジタル庁の目安)外部の試験機関への委託は、規模により50万〜100万円程度(デジタル庁)
大規模(数百ページ以上)導線ごとにフェーズを分けて進めるフェーズごとに対象範囲を区切って見積もる

8-2. 自社対応・制作会社・検証専門会社の比較|任せられる範囲とコスト

依頼先任せられる範囲正式試験費用感向いている企業
自社対応ツールでの一次チェック、代替テキストや見出しの修正難しい人件費のみHTMLを扱える担当者がいる
Web制作会社WCAGに沿った診断、テンプレートやフォームの改修会社により異なる改修範囲に応じて見積もり改修やリニューアルとまとめて任せたい
検証専門会社JISに沿った正式試験、試験結果の作成、改修方針の助言対応試験の委託で50万〜100万円程度(デジタル庁の目安)「準拠」の表記や取引先への提出が必要

実務では、改修を制作会社に任せ、正式な試験だけを検証専門会社に依頼する組み合わせも選択肢になります。

制作会社に依頼する際の要件の固め方は、「中小企業のホームページ制作は設計が9割」でも解説しています。

8-3. 見積額に差が出る3つの前提条件|対象ページ数・試験の有無・CMS改修範囲

複数の会社に見積もりを頼むときは、次の3点をそろえて伝えると比較しやすくなります。

  • 対象ページ数:全ページか、主要導線だけか。テンプレートの種類の数も添える
  • 試験の有無:診断だけか、正式な試験と結果の公開まで含むか。目標の適合レベルとWCAG 2.2の追加項目をどこまで試験するか
  • CMSの改修範囲:表示部分の修正だけか、入力画面の仕様変更(altの必須化など)まで含むか

見積書の項目の読み解き方は、「SEOの見積もりの見極め方と見積書に載らない後出しコスト」も参考になります。

第9章 webアクセシビリティ対応でありがちな6つの疑問|アプリ・PDF・改正JISの扱い

第9章 webアクセシビリティ対応でありがちな6つの疑問|アプリ・PDF・改正JISの扱い

対応を進める途中で、担当者がつまずきやすい6つの疑問に答えます。

9-1. スマホアプリや会員ページもwebアクセシビリティ対応の対象になるか

障害者差別解消法の第8条第2項が「その事業を行うに当たり」と定めているため、合理的配慮の義務は提供する手段を問いません。

会員ページやアプリへの申し出にも、同じように合理的配慮で応える必要があります。ログイン後の会員ページは公開ページと同じJISの基準で改修でき、アプリもWCAGの達成基準を設計の参考にできます。

9-2. 公開済みのPDF資料はすべて作り直す必要があるか

すぐにすべてを作り直す必要はありません。障害者差別解消法の合理的配慮の観点では、申し出があったときにテキスト版などで内容を届けられれば対応できます。新しく公開するPDFからWCAGの考え方に沿って作り、閲覧の多い資料から順にHTMLのページへ置き換える進め方が現実的です。

9-3. 改正JISが発行されたら対応をやり直すことになるのか

大きなやり直しにはなりにくいと考えられます。株式会社ミツエーリンクス 中村直樹氏が解説しています(技術評論社、2026年1月)。それによると、改正JISはWCAG 2.1と2.2で追加された達成基準をJIS X 8341-3:2016に加える方向で検討されています。

2026年10月時点で改正JISの公示は確認できていませんが、WCAG 2.2の適合レベルAAを目標にしておけば、改正後との差は小さく抑えられます。

9-4. 短期公開のLPやキャンペーンページも対応すべきか

公開期間が短いページでも、申し出があれば障害者差別解消法の合理的配慮の対象です。

ボタン・フォーム・見出しなどの部品をWCAG 2.2の適合レベルAAに沿った形でテンプレート化しておけば、組み合わせるだけで一定の水準を保てます。画像1枚に情報を詰め込んだLPは、背景とのコントラストを確保し、同じ内容をテキストで併記するだけでも高齢者に伝わりやすくなります。

9-5. webアクセシビリティ対応はSEOの評価に影響するのか

株式会社Grillの支援経験上、アクセシビリティの改修だけで検索順位が大きく動くケースは多くありません。

ただ、見出し構造・ページタイトル・代替テキストの整備は、「SEO内部対策の完全ガイド」で扱う施策と重なります。順位を直接押し上げるより、SEOの土台を整える改善と捉えるのが実態に近いでしょう。

9-6. 中小企業や個人事業主も合理的配慮の義務の対象になるのか

対象になります。障害者差別解消法の第2条第7号は、事業者を「商業その他の事業を行う者」と定め、企業規模による除外を設けていません。報告を求められて応じなかった場合の罰則(第26条の過料)も、規模を問わず適用されます。

一方、過重な負担の判断では事業規模や財務状況も考慮されます。小さな事業者ほど、建設的対話で代わりの手段を探しつつ、努力義務である環境の整備を進めるのが現実的です。

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第10章 自社サイトのwebアクセシビリティ対応を止めないために|最初の30日で着手する3つのこと

第10章 自社サイトのwebアクセシビリティ対応を止めないために|最初の30日で着手する3つのこと

合理的配慮の申し出は、いつ、どのページについて届くかを事業者の側で選べません。障害者差別解消法にサイト改修の期限はなくても、最初の1通が届いた日が、実質的な対応の締め切りになります。

義務の中心は届いた申し出に合理的配慮で応えることで、サイトの改修は、その応答を毎回の個別対応にしないための環境の整備です。

10-1. 30日で着手する3つの作業|導線の洗い出し・連絡先の設置・方針の下書き

最初の30日は、大きな予算をかけずに進められる次の3つに充てます。

  • 1〜10日目:問い合わせ・購入・予約の導線を書き出し、キーボードだけで最後まで進めるかを試す
  • 11〜20日目:フッターに合理的配慮の申し出の連絡先を置き、フォーム以外の連絡手段も併記する
  • 21〜30日目:対象範囲・目標とするJISの適合レベル・期限を決め、方針ページを「一部準拠」または「配慮」の表記で下書きする

この3つが終われば、合理的配慮に応える体制と、改修の範囲を社内で話し合う材料がそろいます。

フォームの改修を申込率の改善とあわせて進めるなら、「LPOでCVRを改善する効果的な施策10選」が次の検討に役立ちます。

10-2. webアクセシビリティ対応の診断から改修までを株式会社Grillに相談する

キーボードで送信ボタンに届かないフォームは、支援技術の利用者に限らず、高齢者を含むあらゆる人の申込を少しずつ取りこぼしています。

株式会社Grillは、LP改善とSEOの現場で積み重ねてきた導線分析をもとに、問い合わせ・購入・予約の導線に絞ってアクセシビリティを診断します。その結果から、テンプレートとフォームの改修、方針ページの作成までを担います。

最初の到達点は、主要導線のJISに沿った試験結果を添えて、方針ページを「一部準拠」で公開できる状態です。

そこから改修を終えた導線を順に試験し、「準拠」と書ける範囲を広げていきます。WCAGの達成基準ごとの機械的な確認にはAIを使って試験の工数を抑え、キーボードとスクリーンリーダーでの確認は人の手で行います。

費用は、対象ページ数・試験の有無・CMSの改修範囲に応じて、個別にお見積もりします。改修後は申込率や離脱箇所の変化も計測し、方針ページの試験結果とあわせて、取り組みの成果を社内で説明できる形でお渡しします。

\ 導線診断から方針ページ作成まで /

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この記事を書いた人
株式会社epochにてWEB業界のプロジェクトマネージャーとして従事し、デジタル領域での専門性を武器に事業成長を牽引。その後、株式会社LADDERにてWEBデザイナー兼コーダーとして様々な著名インフルエンサーのSNS広告やD2C事業に携わり、LP構成から制作、運用までを一元的に行って広告効果の高いLPを量産。現在は株式会社GrillのWEBデザイナー兼コーダー兼ディレクターとして、幅広い技術を駆使し、HP制作からECサイトの制作、動画制作や編集まで一気通貫で手がけるフロントエンドのスペシャリスト。
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