動画制作の流れの基本を12工程で解説!戻れなくなる3つの分岐点と制作期間の目安!

動画制作の流れの基本を12工程で解説!戻れなくなる3つの分岐点と制作期間の目安!

初稿の動画を見た担当者が「このカットを別のものに差し替えたい」と伝えたとき、その要望が編集で吸収できるのか、それとも撮影をやり直すことになるのかは、その場ではもう決まっています。決めたのは初稿を見た日ではなく、数週間前に絵コンテを承認した日です。

動画制作の工程は、進むごとに変更できる範囲が狭まっていきます。撮影が終われば映像素材はもう増えません。ナレーションの収録が済めば原稿は動かせません。この性質は、公開後にいくらでも差し替えられるWebページの制作とは決定的に違うところです。

そこでここでは、依頼から納品までの流れを12の工程に分け、標準的な日数と発注側の作業に加えて「その工程で何が確定するか」を並べました。実写とアニメーションで変わる分岐、修正回数や権利の取り決め、納品後の運用までを含めて、2026年時点の実務にそって整理しています。

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目次

第1章 動画制作の流れは「戻れる工程」と「戻れない工程」に分かれる|12工程の全体像

第1章 動画制作の流れは「戻れる工程」と「戻れない工程」に分かれる|12工程の全体像

最初に全体像を一枚で示します。ただし並べる軸は日付だけではありません。その工程を過ぎると何が直せなくなるのか、という軸を重ねて見ていきます。

1-1. 依頼から納品までの12工程|動画制作の流れで何が確定するかを一覧化する

制作会社に外注する場合の標準的な動画制作の流れは、次の12工程です。日数は1〜3分程度の企業向け動画を想定した目安で、撮影規模や社内の確認体制によって前後します。

#工程標準日数発注側の主な作業この工程で確定するもの
1問い合わせ・与件共有1〜3日目的・予算・希望納期の提示相談先の候補
2初回ヒアリング1日課題と使用シーンの説明制作の方向性
3企画・構成提案/見積もり5〜10日提案内容の社内共有見積もりの前提条件
4発注・契約3〜7日契約書・発注書の締結権利と修正の条件
5構成案(シナリオ)確定5〜10日内容と順番の承認伝える情報と話の流れ
6絵コンテ・Vコンテ確定5〜10日カット割りの承認撮影すべき映像の範囲
7撮影準備5〜10日出演者・ロケ地の手配協力日程・出演者・場所
8撮影1〜3日現場での立ち会いと判断映像素材そのもの
9仮編集・初稿提出5〜10日初稿の確認完成形の骨格
10修正対応5〜10日修正指示の取りまとめ最終的な構成
11ナレーション収録・MA・仕上げ5〜7日原稿とキャスト選定の承認音声・テロップ・色
12試写・検収・納品3〜5日検収と受け取り納品データ

太字にした3つの工程が、この記事で繰り返し出てくる分岐点です。企画から納品までを日程表として眺めると全工程が等しく並んで見えますが、実務上の重みはまったく均等ではありません。

1-2. 変更コストが跳ね上がる3つの不可逆ポイント

1-2. 変更コストが跳ね上がる3つの不可逆ポイント

動画制作の流れで「戻れなくなる」工程は3か所あります。ここを起点に、やり直しの費用が段階的に変わります。

① 絵コンテの承認(工程6)

何を撮るかが確定します。承認後に「この説明シーンも入れたい」と要望を追加すると、撮影項目が増えるため準備工程からやり直しになります。巻き戻しは数日から2週間程度です。

② 撮影の終了(工程8)

映像素材が確定します。撮っていないカットは編集では作れません。差し替えるには再撮影が必要で、機材とスタッフを再度手配する分の費用が丸ごと発生します。

③ MA(整音)の着手(工程11)

音声と映像の尺が確定します。ナレーションの言い回しやカットの長さを変えると、整音をやり直すことになります。制作会社の見積書でMAが1回分しか計上されていないのは、この工程が原則として一度で終わる前提だからです。

株式会社Grillが2024年1月〜2026年6月に制作した企業向け動画(N=68本)では、絵コンテの確定後に構成の変更が入った案件で、平均9日の巻き戻しが発生していました。同じ変更が構成案の段階で出ていれば、必要だったのは書き直しの1〜2日だけです。

1-3. 納品まで1.5〜3か月|スケジュールが伸びる条件と縮む条件

動画制作の期間は、初回相談から納品まで1.5〜3か月がひとつの目安です。上の12工程の日数を単純に足すと40〜70日前後になり、ここに社内の確認待ちが加算されます。

期間が伸びる条件は、撮影日数が2日以上、出演者にタレントを起用する、撮影場所が複数拠点にまたがる、承認者が3名以上いる、といったものです。

反対に縮む条件は、素材を自社で用意できる、撮影を1日に収める、アニメーションや既存素材の再編集で作る、決裁者が1名で完結する、の4つです。

どの条件に当てはまるかは、企画の内容が決まる前におおよそ見当がつきます。依頼のスケジュールを引くときは、この4条件を先に自社へ当てはめてから日数を積んでください。

株式会社Grillの制作案件68本のうち、初回相談から納品までの中央値は52日でした。当初予定より2週間以上遅れた案件は14本ありましたが、そのうち11本は撮影より前の工程で止まっています。遅延の主因は制作側の作業速度ではなく、構成案や絵コンテの承認が社内で滞留したことでした。

動画の使い道が固まっていない状態で日程だけ先に決めると、この滞留が起きやすくなります。用途と成果指標の決め方は「動画制作の目的とは?企業が動画を活用すべき理由」で整理していますので、目的が定まっていない段階で依頼を検討している方はそちらから確認してください。

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第2章 問い合わせ前に社内で固める5項目|依頼の精度が動画制作の流れを決める

第2章 問い合わせ前に社内で固める5項目|依頼の精度が動画制作の流れを決める

動画制作の流れは、制作会社へ問い合わせた瞬間ではなく、その手前から始まっています。ここで曖昧なまま進むと、後の工程で必ず巻き戻しが発生します。固めるべきは次の5項目です。

2-1. 動画制作の目的と成果指標|1本に1つだけメッセージを載せる

最初に決めるのは、動画を見た人にどうなってほしいかです。採用の応募を増やしたいのか、商談の場で説明の手間を減らしたいのか、Web広告で認知を取りたいのかによって、必要な尺も構成も変わります。

避けたいのは、1本に複数の役割を持たせることです。会社の理念と採用情報とサービス説明を1本に詰め込むと、どの視聴者にとっても長い動画になります。目的が2つあるなら、企画を2本に分けたうえで撮影を1日にまとめるほうが結果的に安く済みます。

2-2. 予算レンジと決裁ライン|見積もりを取る前に上限を決める

2-2. 予算レンジと決裁ライン|見積もりを取る前に上限を決める

予算は「いくらまでなら社内で通るか」を先に確認します。制作会社は予算レンジに合わせて企画の規模を調整するため、上限を伝えたほうが提案の精度が上がります。

伏せたまま進めると、実現できない企画の検討に2週間を使うことになります。企画の前提として上限を共有することは、値切りの交渉とは別の作業です。

企業向け動画の費用相場は、既存素材の再編集なら10万〜30万円、撮影を伴う1〜3分の実写なら30万〜150万円、アニメーションは40万〜200万円程度が目安です。

映像制作の規模によって上下しますが、企画の規模感を伝える出発点として使えます。内訳の読み方は「動画制作の見積もりの目安はいくら?費用の内訳・相場と見積書の読み方を徹底解説!」で詳しく扱っています。

2-3. 公開日から逆算した納期|社内確認の日数を先に確保する

納期は「いつまでに欲しい」ではなく「いつ公開するか」から逆算します。展示会、株主総会、採用説明会のように動かせない日がある場合は、その日を起点に12工程を割り付けてスケジュールを組みます。

このとき、社内確認に使う日数をスケジュールへ明示的に組み込んでください。構成案の承認に5営業日、初稿の確認に5営業日を確保しておくと、制作会社側のスケジュールと実態がずれません。逆算した日付が依頼の前提条件になります。

2-4. 決裁者と窓口担当|承認する人を工程の前半に出す

動画制作でもっとも進行を止めるのは、修正の量ではなく承認の往復です。窓口は1名に固定し、決裁者が誰かを制作会社へ先に共有します。

役員が最終決裁者である場合、初稿を見せる段階ではなく構成案の段階で一度確認を通しておきます。この一手間で、後から構成を覆される事態をほぼ防げます。

2-5. 参考動画とNGイメージ|言葉より3本のURLが早い

イメージの共有は、形容詞よりも実物のほうが正確です。「かっこいい」「親しみやすい」といった言葉は人によって解釈が割れます。

参考にしたい動画を3本、避けたい雰囲気の動画を1本、URLで渡してください。この4本があるだけで、初回の打ち合わせからスケジュールの共有までが一度で済みます。

あわせてロゴデータ、既存の写真素材、会社案内のパンフレットなど、社内にある素材の有無も棚卸ししておくと、初回ヒアリングが一度で終わります。

5項目のうち、目的・予算・納期の3つが決まっていれば依頼して構いません。参考動画と決裁者の整理は、初回ヒアリングと並行して進められます。完璧に固めてから動こうとすると、その検討期間自体がスケジュールを圧迫します。

第3章 初回ヒアリングから契約締結まで|動画制作を依頼する流れの5ステップ

第3章 初回ヒアリングから契約締結まで|動画制作を依頼する流れの5ステップ

ここからは制作会社とのやりとりが始まります。依頼の工程は5つのステップに分かれ、標準では2〜4週間かかります。映像制作を外部に依頼する経験が少ない企業ほど、この5ステップで企画の解像度が決まります。

3-1. STEP1 問い合わせと初回ヒアリング|制作会社が確認する6つの項目

問い合わせのあと、制作会社は1時間前後のヒアリングを設定します。この場で確認されるのは、目的と視聴者、公開先の媒体、希望納期とスケジュール、予算レンジ、社内にある素材、そして誰が決裁するかの6項目です。

第2章の5項目を用意していれば、この打ち合わせは1回で完結します。逆に目的が固まっていない状態だと、ヒアリングが2回、3回と増えて期間だけが消費されます。

3-2. STEP2 企画・構成の提案|同じ条件で複数社を比較する

ヒアリングから5〜10日で、企画書と概算見積もりが提出されます。企画書には動画の方向性、想定尺、大まかな構成、そして実写かアニメーションかという方式が記載されます。

企画書を読むときは、演出のアイデアより前に目的との接続を確認してください。「誰に何を伝え、その結果どうなってほしいか」が1行で書かれていれば、その企画は構成案の工程へそのまま進められます。

書かれていなければ、依頼時の与件が制作会社へ届いていない可能性があります。

複数社を比較する場合は、同じ条件を全社へ渡してください。尺、撮影日数、修正回数、納品形式の4つを揃えないと、金額の高低が制作内容の差なのか条件の差なのか判別できません。

3-3. STEP3 見積もりの前提条件をそろえる|金額が動く4つの変数

見積書の金額は、この時点ではまだ確定値ではありません。費用を動かす変数は、撮影日数、出演者の有無と契約形態、編集の工程数(ナレーションやMAを含むか)、そして修正回数の4つです。

「一式」とだけ書かれた見積書は、後から追加費用が発生しやすい形式です。工程ごとに金額が割られているか、含まれない作業が明記されているかを確認してください。予算を抑えたい場合の考え方は「動画制作を格安で量産できるおすすめ制作会社28選!費用相場と選び方を徹底解説!」で扱っています。

3-4. STEP4 契約と発注|締結する3つの書類

発注時に交わすのは、基本契約書、秘密保持契約(NDA)、個別の発注書という3種類が一般的です。基本契約書には権利の帰属と修正の条件、検収の基準が書かれます。

支払い条件もここで確定します。制作会社では着手金50%・納品時50%という分割が多く、撮影が伴う案件では撮影日の前に着手金を求められるケースが標準です。

依頼の規模が大きい場合は、工程ごとの分割払いに応じる映像制作会社もあります。

3-5. STEP5 キックオフ|制作体制と連絡経路を確認する

契約後、制作チームとのキックオフを行います。ここで確認しておきたいのは、ディレクターが誰か、撮影と編集を誰が担当するか、連絡はどの経路で行うかの3点です。

株式会社Grillが相談を受ける進行トラブルのうち、原因の多くは提案した担当者と実際に制作する担当者が別人であることに起因します。企画の意図が伝言で薄まり、初稿で認識のずれが表面化する構造です。キックオフの場で「提案書を書いた方が進行にも入りますか」と一度聞いておくだけで、この経路は確認できます。

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第4章 プリプロダクションの進み方|構成・絵コンテ・撮影準備がFIXするまで

第4章 プリプロダクションの進み方|構成・絵コンテ・撮影準備がFIXするまで

契約が済むと、撮影の前段階にあたるプリプロダクションに入ります。動画制作の流れのなかで、完成度の大半がここで決まる工程です。標準では3〜5週間を要します。

4-1. 構成案(シナリオ)の作成|情報の順番を紙の上で確定させる

構成案は、動画で伝える内容とその順番を文章にしたものです。字コンテ、シナリオ、企画構成書などと呼ばれ、制作会社によって呼称が変わります。企画書が方向性を示す文書であるのに対し、構成案は尺と情報量まで踏み込んだ設計図にあたります。

アニメーションで作る場合も、この工程の位置づけは変わりません。ここでの確認ポイントは3つあります。

  • 伝えたい情報が抜けていないか
  • 視聴者にとって理解しやすい順番になっているか
  • 想定尺に対して情報量が多すぎないか

3つ目は特に見落とされがちです。1分の動画に入るナレーションは300字前後が上限になります。

4-2. 絵コンテ・Vコンテの確認|1つ目の不可逆ポイントを越える前に

4-2. 絵コンテ・Vコンテの確認|1つ目の不可逆ポイントを越える前に

絵コンテは、構成案をカット単位の画に落としたものです。1カットごとに、画面に何が映るか、ナレーションやテロップに何が入るか、秒数がどれくらいかを記載します。

動きのイメージを共有するために、絵コンテを仮の音声とつないだVコンテ(ビデオコンテ)を作る制作会社もあります。アニメーションの案件では、この段階でテンポの検証まで行うのが一般的です。

絵コンテの承認は、第1章で挙げた1つ目の不可逆ポイントです。ここで確定するのは撮影すべき映像の範囲であり、承認後に追加された要望は撮影項目の追加を意味します。

絵コンテを確認するときは、絵の巧拙ではなく次の3点を見てください。①撮影が必要なカットに、自社で手配すべき人・物・場所が含まれていないか。②社内で撮影許可が必要な区画が映っていないか。③テロップに入る数値や固有名詞が正確か。

この3点は、後で気づくと必ず巻き戻しになります。

4-3. 撮影準備|ロケハン・キャスティング・香盤表の3点セット

絵コンテが固まると、撮影の準備に移ります。実施されるのは、撮影場所の下見(ロケハン)、出演者の選定(キャスティング)、当日の進行表(香盤表)の作成です。

制作会社が行うロケハンでは、電源の位置、日照の時間帯、周囲の騒音、搬入経路が確認されます。自社オフィスで撮る場合でも、当日に「この時間帯は西日が強くて撮れない」と判明する事態を防ぐため、事前の下見は省略しないほうが安全です。

出演者は、社員が出るのか、モデルやタレントを起用するのかで手配の期間が変わります。社員なら日程調整だけですが、外部キャストは選定から契約まで1〜2週間を見込みます。

4-4. 発注側が撮影前に用意するもの|素材の遅れが工程全体を止める

制作会社から依頼される準備物は、おおむね決まっています。ロゴデータ(AIまたはEPS形式)、既存の写真や過去の映像制作物、製品現物、パンフレット、社名や役職の正式表記、そして撮影場所の使用許可です。

株式会社Grillの案件では、撮影日の前日にロゴの最新版が旧版と差し替わっていたことが判明し、テロップ素材の作り直しが発生した例があります。素材の提供は「担当者が持っている最新版」ではなく、社内の正式な保管場所から取り出す運用にしておくと、この種の手戻りは起きません。

第5章 撮影当日の1日をどう使うか|やり直しが最も高くつく工程の進め方

第5章 撮影当日の1日をどう使うか|やり直しが最も高くつく工程の進め方

撮影は、動画制作の流れのなかで最も密度が高く、最も巻き戻しにくい工程です。数週間かけて準備したものが1日で確定します。ここでは当日の進み方と、発注側が担う判断について整理します。

5-1. 撮影当日のタイムライン|1日の標準的な進行

企業向け動画の撮影は、1日で終えるケースが大半です。標準的な進行は次のようになります。

時間帯内容発注側の関与
開始1〜2時間前機材搬入・照明の設営入館手配、電源の案内
開始直後テスト撮影・画角と露出の確認画角のイメージ確認
午前メインカットの撮影OKテイクの判断
昼休憩・素材の確認撮り漏れの洗い出し
午後インタビュー・寄りのカット発言内容の確認
終了前イメージカット・予備素材の撮影追加要望の最終確認

午後の後半に予備素材の時間を置いておくのが、経験的にもっとも効きます。編集の途中で「つなぎのカットが足りない」となる事態を、この30分が防ぎます。

香盤表を作る段階で、企画に含まれないカットを撮る余白をスケジュールへ入れておいてください。

5-2. 立ち会いで発注側が判断すべき3つのこと

5-2. 立ち会いで発注側が判断すべき3つのこと

撮影現場で発注側にしか判断できないことが3つあります。企画どおりに撮れているかという確認は制作会社が担いますが、次の3点は代われません。

① 発言内容が事実として正しいか

インタビューで語られた数値、製品仕様、社名の呼称が正確かどうかは、社内の人間しか確認できません。

② 映してはいけないものが映っていないか

開発中の製品、他社のロゴ、顧客名の入った書類、個人情報が記載されたモニターなどです。編集でぼかす対応は可能ですが、修正の手間が発生します。

③ 社内的に「この見せ方で通るか」

役員の映り方、部署間のバランス、服装の統一感といった判断です。後から社内で指摘が入りやすい部分でもあります。

5-3. 撮り漏れを防ぐ確認の型|香盤表に沿って現場で消し込む

撮り漏れは、撮影が終わってから気づくため取り返しがつきません。香盤表を印刷して持ち込み、撮り終えたカットをその場で消していく運用が確実です。

昼休憩のタイミングで、午前中に撮った素材を一度モニターで再生してもらってください。露出、音声の入り、背景の写り込みを昼の時点で確認しておけば、問題があっても午後に撮り直せます。すべての確認を終了間際に回すと、対処する時間が残りません。

5-4. 撮影終了で確定するもの|再撮影に必要な費用の目安

撮影が終わった時点で、使える映像素材の範囲が確定します。以降の編集は、この日に撮ったものの組み合わせだけで進みます。

再撮影が必要になった場合の追加費用は、機材とスタッフの再手配が丸ごと発生するため、当初の撮影費とほぼ同額です。

株式会社Grillの案件では、撮影日を1日追加した際の増額は平均18万円前後でした。1〜3分の企業向け動画の総額が50万〜100万円のレンジであることを踏まえると、総額の2〜3割に相当します。

複数の用途を見込んでいるなら、同じ1日のなかで撮影項目をまとめておくほうが予算効率は高くなります。この考え方は第12章であらためて扱います。

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第6章 編集・ナレーション・MA・試写|納品までのポストプロダクションの流れ

第6章 編集・ナレーション・MA・試写|納品までのポストプロダクションの流れ

撮影後の工程をポストプロダクションと呼びます。動画が形になっていく段階であり、発注側が最も多くの判断を求められる期間でもあります。標準では3〜4週間です。

6-1. 仮編集(オフライン編集)と初稿の提出|完成形の骨格ができる

まず行われるのが仮編集です。撮った素材から使うカットを選び、絵コンテの順番につないで全体の流れを作ります。この段階の動画は、色調整もテロップも仮の状態で提出されるのが通常です。

初稿を見るときの注意点は、仕上げの粗さを指摘しないことです。色が浅い、テロップのフォントが仮、ナレーションが機械音声、といった点はこの後の工程で整います。ここで見るべきは、伝わる順番になっているか、尺は適切か、必要な情報が入っているかの3点です。

判断に迷ったときは、企画書に書かれた目的へ戻ってください。企画の狙いに照らして必要かどうかで決めれば、好みの議論に流れずに済みます。

6-2. 修正指示の出し方|タイムコードと意図をセットで伝える

6-2. 修正指示の出し方|タイムコードと意図をセットで伝える

修正の伝え方によって、往復の回数は大きく変わります。効率の良い指示は、次の3要素で構成されます。

  • どこを:タイムコード(例:0分42秒〜0分48秒)
  • どうしたいか:具体的な変更内容(例:テロップを2行から1行に)
  • なぜ:意図(例:スマートフォンで読めない可能性があるため)

意図を添えると、指定どおりに直すよりも良い解決策を制作会社が提示できます。反対に「なんとなく硬い」「もう少し明るく」という抽象的な指示は、解釈の往復を生みます。

社内から集めた修正指示は、必ず窓口担当が1本にまとめてから渡してください。複数人の指示が個別に届くと、相反する内容が混在し、制作会社側で判断できなくなります。第9章で扱う承認フローの設計は、この工程のために存在します。

6-3. ナレーション収録とキャスト選定|原稿は収録前に確定させる

構成が固まると、ナレーションの収録に進みます。キャストは、制作会社から複数名のサンプル音声が提示され、そのなかから選ぶ形式が一般的です。男女、年齢層、トーンによって動画の印象が変わるため、目的に合わせて選定します。

原稿は収録前に文字単位で確定させます。読み間違えやすい固有名詞、英字の読み方、数値の単位には、あらかじめ読み仮名を添えてください。収録後に文言を変えると、スタジオとキャストの再手配が必要になります。

6-4. MA・カラーグレーディング・テロップ仕上げ|3つ目の不可逆ポイント

MA(マルチオーディオ)は、ナレーション、BGM、効果音、環境音の音量バランスを整える工程です。あわせて色調整(カラーグレーディング)とテロップの本番デザインが入り、ここで動画が完成形になります。

MAの着手が3つ目の不可逆ポイントです。音を映像の尺に合わせて詰めていく作業のため、着手後にカットの長さを変えると、整えたバランスが一度崩れます。第1章で触れた計上のしかたは、ここから来ています。

6-5. 試写・検収・納品|受け取り時に確認する5項目

完成版が提出されたら、検収を行います。確認すべきは次の5項目です。

  1. 納品形式が指定どおりか(コーデック、解像度、フレームレート)
  2. 尺違いのバリエーションが揃っているか(30秒版、縦型版など)
  3. テロップの誤字脱字と数値の正確性
  4. 音量が公開先の基準に収まっているか
  5. 権利表記やロゴの規定が守られているか

納品はギガファイル便などのファイル転送サービス、クラウドストレージ、物理メディアのいずれかで行われます。素材データの引き渡しについては第8章で扱います。

第7章 実写・アニメーション・素材編集の3方式で変わる動画制作の工程分岐

第7章 実写・アニメーション・素材編集の3方式で変わる動画制作の工程分岐

ここまでは撮影を伴う実写を前提に説明してきました。しかし動画制作の工程は、どの方式で作るかによって分岐します。3つの方式を並べて、分岐する箇所だけを取り出します。

7-1. 3方式の比較|動画制作の流れで戻れなくなる位置が変わる

方式が変わると、期間も費用も変わりますが、実務上いちばん影響が大きいのは「どこで戻れなくなるか」の位置です。

方式標準期間費用の目安最初の不可逆ポイント向いている用途
実写2〜3か月30万〜150万円撮影の終了会社紹介、採用、インタビュー、施設案内
アニメーション1.5〜2.5か月40万〜200万円イラスト・デザインの確定サービス説明、仕組みの図解、無形商材
素材編集3週間〜1.5か月10万〜40万円使用素材の選定完了展示会用、SNS投稿、既存映像の再構成

映像制作の現場では、この3方式を用途で使い分けます。実写は現実に存在するものしか映せない代わりに、人や場所の空気が伝わります。

アニメーションは目に見えない仕組みを図解できますが、撮影の代わりにデザイン工程が入ります。素材編集は手元にある映像制作物や写真を組み替える方式で、最も短期間で仕上がります。

7-2. アニメーション動画の工程|撮影がない代わりに増える2つの作業

7-2. アニメーション動画の工程|撮影がない代わりに増える2つの作業

アニメーションの動画制作では、撮影と撮影準備が工程表から消えます。代わりに、イラストや図版の素材制作と、モーションの設計という2つの作業が入ります。依頼の窓口も、カメラマンではなくデザイナーとの調整が中心になります。

アニメーションで進む場合の工程は、次の8つに整理できます。実写と共通するのは前半4つで、5番目以降がアニメーション固有の作業です。

#工程標準日数発注側の確認内容
1ヒアリング・企画5〜10日目的と使用シーンの共有
2構成案(ナレーション原稿)5〜10日情報の順番と分量
3絵コンテ5〜10日画面に載せる図の構造
4デザイントーンの決定3〜5日配色・タッチの方向性
5イラスト・図版のラフ5〜10日構図とキャラクターの確定
6本番イラストの制作7〜14日色と線の最終確認
7アニメーション編集(モーション付け)7〜14日動きとテンポ
8ナレーション収録・MA・納品5〜7日音声と尺の最終確認

アニメーションで戻れなくなるのは、5番目のラフを承認して本番のイラスト制作に入った時点です。ラフ段階では自由に変えられますが、色と線が確定した後にキャラクターの服装や画面の構図を変えると、描き直しの費用が発生します。絵コンテが実写における設計図であるように、アニメーションではラフの承認が同じ役割を担います。

アニメーションの制作を依頼するときに見落とされやすいのが、ナレーション原稿と画面の関係です。実写では映像が先にあり音を後から乗せますが、アニメーションは原稿の尺に合わせて絵を動かします。つまり原稿が確定しないと、アニメーションの編集そのものを始められません。

アニメーションの依頼では、参考にしたい動画を渡す際に「この作品のどこが良いか」を一言添えてください。色使いなのか、動きの速さなのか、図解の抽象度なのかで、デザイントーンの工程で作られるものが変わります。アニメーションは表現の自由度が高いぶん、方向性の言語化がスケジュールを左右します。

7-3. 素材編集型で作る場合|最短ルートと品質の上限

既存の素材を再編集する方式は、動画制作の流れが大幅に短縮されます。ヒアリング、企画と構成案、素材の選定、編集、修正、納品の6工程で完結し、3週間程度で仕上がるケースもあります。

ただし品質の上限は、手元にある素材の質で決まります。過去の撮影データが低解像度だったり、必要な画角のカットが存在しなかったりすると、編集では補えません。制作会社へ相談する際は、素材の解像度と撮影時期を先に伝えると判断が早くなります。

7-4. 方式が混ざる場合の進め方|実写とアニメーションの併用

実務では、実写の撮影素材にアニメーションの図解を重ねる構成が多く使われます。採用向けの動画でオフィスの様子を実写で見せ、事業内容だけを図解する、といった形です。

この場合、工程は実写の流れをベースに、アニメーション部分のデザイン工程が並行して走ります。注意点は、両方の素材が揃わないと編集を開始できないことです。どちらか一方の承認が遅れると、スケジュール全体が止まります。

企画の段階で、どのパートを実写で撮り、どのパートをアニメーションで図解するかを決めておいてください。撮影してから「ここは図のほうが伝わる」と判断すると、撮った素材が使われないまま費用だけが残ります。

7-5. 方式を決めるタイミング|企画書の承認までに確定させる

3方式のどれで作るかは、企画書を承認する時点までに決めます。構成案より後ろに持ち越すと、実写なら撮影準備、アニメーションならデザイン工程が動き出してしまい、切り替えのたびに数日から2週間の巻き戻しが発生します。

判断の材料は3つです。1つ目は、伝えたいものが目に見えるかどうか。工場やオフィス、人の表情は実写が向き、サービスの仕組みや導入後の変化はアニメーションが向きます。

2つ目は更新の頻度です。価格や機能を年に数回書き換えるなら、編集で差し替えられるアニメーションが有利になります。3つ目はスケジュールの余裕で、撮影日を確保できない時期ならアニメーションか素材編集型が現実的です。

「どちらが安いか」で選べますか、という質問をよく受けます。費用だけで比べると、簡易なアニメーションは実写より安く、作り込んだアニメーションは実写より高くなります。金額の上下は方式ではなく作業量で決まるため、企画の目的から方式を決め、そのうえで予算に合わせて作業量を調整する順番が結果的に無駄がありません。

採用目的で方式を検討している場合は、「採用動画の制作会社おすすめ8選!費用相場・選び方・制作の流れを徹底比較!」に用途別の事例をまとめています。

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第8章 修正回数・著作権・出演者の使用期間|流れの途中で決める5つの契約条件

第8章 修正回数・著作権・出演者の使用期間|流れの途中で決める5つの契約条件

工程の話とは別に、動画制作では契約条件の取り決めが進行に影響します。決めるタイミングを逃すと、納品後に使えない動画が手元に残ることがあります。押さえるべき条件は5つです。

8-1. 修正回数と「1回」の定義|数字だけでは条件は決まらない

見積書に「修正2回まで」と書かれていても、その1回が何を指すかは制作会社によって異なります。初稿に対する指示のまとまりを1回と数える場合もあれば、修正版を提出するごとに1回と数える場合もあります。

確認すべきは、①何に対する修正を数えるのか、②複数人の指示をまとめて出した場合に1回と数えるか、③超過分の単価はいくらか、の3点です。動画は編集の作業単位が細かいため、この定義の違いが追加費用として表面化しやすくなります。

8-2. 著作権の帰属と譲渡|納品されても自由に使えるとは限らない

完成した動画の著作権は、原則として制作した側に発生します。契約で譲渡を定めない限り、発注側が取得するのは「使用する権利」であって著作権そのものではありません。アニメーションで制作したキャラクターやイラストも同じ扱いで、別の媒体へ流用したい場合は範囲の確認が必要です。

実務上の分かれ目は、二次利用の範囲です。Webサイト掲載のみを想定した契約で、後からテレビCMやデジタルサイネージに転用しようとすると、追加の許諾が必要になります。将来の用途に幅を持たせたいなら、契約時に使用範囲を広めに定義しておくのが安全です。

8-3. 出演者・BGM・ストック素材の使用期間|期限つきの権利に注意する

8-3. 出演者・BGM・ストック素材の使用期間|期限つきの権利に注意する

動画のなかには、期限つきの権利が含まれることがあります。代表的なのが次の3つです。

  • 出演者の肖像:タレントやモデルの起用は、使用期間1年・使用媒体限定の契約が一般的です。期限後も公開を続けるには更新料が発生します。
  • BGM:商用利用可能な音源ライブラリを使うのが標準ですが、ライセンスの種類によって使用範囲が異なります。
  • ストック素材:購入した映像・写真素材にも利用規約があり、再配布や一部用途が制限されるものがあります。

社員が出演する場合も、退職後の取り扱いを決めておくと後の判断が楽になります。採用向けの動画は特に長く使うため、この確認を省略しないでください。

8-4. 撮影原素材とプロジェクトファイルの引き渡し|2本目を作るときに効く

納品されるのは、通常は書き出し済みの動画ファイルだけです。撮影した未使用の素材や、編集ソフトのプロジェクトファイル、アニメーションのイラストデータは含まれません。

将来的に自社で修正したい、別の制作会社に引き継ぎたいという想定があるなら、契約時に引き渡しの可否を確認します。原素材の引き渡しは、保管費用やデータ容量の関係で有償となる場合があります。

8-5. 検収の基準と納品形式|受け取り条件を先に文章にする

検収の基準を定めておかないと、「まだ直したい」と「もう完了している」の認識が食い違います。検収期間を納品から何営業日とするか、期間内に連絡がなければ検収完了とみなすか、といった条件を契約書で確認してください。

納品形式も同様です。MP4のみか、編集用の中間コーデックも含むか、SNS用の縦型や短尺版を何本作るかを、発注の時点で決めておきます。

株式会社Grillでは、この5条件を構成案の確定と同じタイミングで文章にする進め方をとっています。撮影が始まってから権利の話を持ち出すと、出演者の再交渉が必要になり、スケジュールが最低でも1週間は動くためです。

第9章 止まるのは制作ではなく決裁|社内の承認フローとレビュー体制の設計

第9章 止まるのは制作ではなく決裁|社内の承認フローとレビュー体制の設計

第1章で触れたとおり、遅延の多くは制作側ではなく発注側の承認で発生します。ここは制作会社が代われない領域であり、発注側の設計次第で期間が数週間変わります。

9-1. 承認を求める回数を3回に絞る|通す場所を決めておく

動画制作の工程で決裁者の承認が必要なのは、原則として3か所です。企画書を兼ねた構成案の確定時、絵コンテの確定時、そして初稿の確認時になります。

この3か所以外で決裁者に見せると、判断の材料が揃っていない状態でコメントを受けることになります。仮編集の途中経過を役員に見せた結果、色や音の未完成な部分に指摘が集まる、というのは典型的な失敗です。

9-2. レビューの取りまとめ|相反する指示を制作会社へ渡さない

複数部署が関わる案件では、指示が矛盾することがあります。広報は「もっと落ち着いたトーンに」、事業部は「もっと勢いを出して」と言うようなケースです。

窓口担当の役割は、集まった意見を整理し、優先順位を付けて1本の指示にすることです。判断できない場合は、決裁者に決めてもらってから渡します。矛盾したまま制作会社へ流すと、修正回数だけが消費されます。

9-3. 確認にかける日数を決める|レビュー1周が何日を消費するか

9-3. 確認にかける日数を決める|レビュー1周が何日を消費するか

制作会社の作業日数は見積もりに書かれていますが、社内確認の日数はスケジュールに書かれていないことがほとんどです。実際にはここが工期の3割前後を占めます。映像制作の工程表を受け取ったら、自社の確認期間を書き足して1本のスケジュールにしてください。

構成案の確認に5営業日、絵コンテの確認に5営業日、初稿の確認に5営業日を確保すると、承認だけで3週間を使う計算になります。納期が厳しい案件では、この日数を短縮する合意を先に取り付けてください。

株式会社Grillの制作案件68本のうち、窓口担当を1名に固定し、確認の締切を事前に決めていた案件(N=31件)の納品までの中央値は44日でした。それ以外の案件は61日で、差は17日です。制作そのものの作業量に違いはありません。

9-4. 決裁者が途中で変わったときの対処|構成案まで戻る判断基準

人事異動や体制変更で、制作途中に決裁者が変わることがあります。このとき判断すべきは、どこまで戻るかです。

新しい決裁者の意向が構成そのものに及ぶ場合は、絵コンテまで進んでいても構成案の段階に戻すほうが、結果的に早く終わります。撮影後に構成の変更が出ると再撮影になるため、戻るなら撮影前という判断が原則になります。

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第10章 依頼先で変わる進行と費用の発生タイミング|制作会社・フリーランス・内製の比較

第10章 依頼先で変わる進行と費用の発生タイミング|制作会社・フリーランス・内製の比較

同じ12工程でも、誰に頼むかで進み方と支払いのタイミングが変わります。3つの選択肢と、代理店を経由する場合の違いを整理します。

10-1. 依頼先タイプ別に見る動画制作の進行と支払い条件

費用の総額だけでなく、いつ支払いが発生するかは予算の組み方に直結します。

依頼先進行の特徴標準期間支払いのタイミング向いているケース
制作会社ディレクターが工程を管理し、撮影・編集は分業2〜3か月着手金50%+納品時50%撮影を伴う、社内調整が多い
フリーランス窓口と制作者が同一で工程が圧縮される1〜2か月納品時一括または半金前払い予算が限られる、編集中心
内製工程を自由に組めるが機材と人が先行投資案件による機材・ツールの初期費用本数が多い、内容の更新が頻繁
広告代理店経由制作会社へ再委託され、進行は代理店が管理2.5〜3.5か月代理店の支払いサイトに準拠配信まで一括で任せたい

代理店を経由する場合、ディレクションフィーとして制作費の15〜25%程度が上乗せされるのが一般的です。その分、媒体出稿と制作の窓口が一本化されます。

もうひとつの軸が、依頼先の得意領域です。撮影を主戦場とする映像制作会社と、アニメーションを専門に扱う制作会社では、同じ企画でも提案の形が変わります。アニメーション中心の企画なら、実写の実績が多い会社より、図解表現を蓄積している会社のほうが工程は短くなります。

10-2. 内製に切り替える判断ライン|年間本数で考える

動画を社内で作るかどうかは、質の問題ではなく本数の問題として考えると判断しやすくなります。年間2〜3本なら外注のほうが安く、月1本以上を継続するなら内製の検討余地が出ます。

内製で見落とされやすいのが、機材費用ではなく人の時間です。1本あたりの編集工数は、5分程度の動画で20〜40時間かかります。担当者の本来業務を圧迫していないかを、着手前に見積もってください。

10-3. 費用が確定するタイミング|見積もりが動く3つの局面

10-3. 費用が確定するタイミング|見積もりが動く3つの局面

見積もりの金額が確定するのは、絵コンテが固まった時点です。それ以前の金額は、撮影日数と素材の量を仮置きした概算にすぎません。

金額が動くのは主に3つの局面です。第一に絵コンテの確定時、撮影項目の増減で調整されます。第二に撮影日程の確定後で、キャンセル料の規定が発生します。第三に修正回数の超過時です。

撮影のキャンセル料は、7日前から30〜50%、前日〜当日は100%という設定が一般的です。出演者やスタジオの手配が済んでいるためで、日程変更の相談は早いほど費用が抑えられます。

10-4. 費用負担を軽くする制度|補助金の申請は工程の前に検討する

動画制作には、補助金や助成金を利用できる場合があります。ただし、多くの制度は交付決定の前に発注した費用を対象外とするため、契約より前に検討を始める必要があります。

交付決定まで2〜4か月を要する制度もあるため、スケジュールへの影響は無視できません。使える制度と申請の順序は「【2026年最新】動画制作に使える補助金・助成金4選とは?」にまとめています。

地域で制作会社を探す段階に入っているなら、「東京の動画制作会社おすすめ30選!費用相場と失敗しない選び方」も候補の絞り込みに使えます。

第11章 動画制作の流れで発注担当者が迷う7つの疑問

第11章 動画制作の流れで発注担当者が迷う7つの疑問

ここでは、工程の説明だけでは拾いきれない実務上の疑問を扱います。株式会社Grillが相談の場で実際に受ける質問から、判断に迷いやすいものを選びました。

11-1. 絵コンテの承認後に構成を変えたい場合、どこまで戻りますか

撮影前であれば、構成案の段階まで戻します。日数は5〜10日の巻き戻しで、追加費用は制作会社の修正規定によります。撮影後の場合は、撮った素材の範囲で組み替えられるかを先に確認し、足りなければ再撮影の判断になります。

11-2. 撮影に立ち会えない場合、進行にどんな影響がありますか

撮影は進みますが、第5章で挙げた3つの判断を映像制作の担当者が代行できません。事実確認と社内基準の判断が後日に持ち越されるため、初稿での修正が増える傾向があります。当日の立ち会いが難しい場合は、リモートで随時確認できる体制を組んでおくと影響を抑えられます。

11-3. 初稿の修正指示は、どの単位でまとめて出すのが適切ですか

社内の全員分をまとめて1回で出すのが原則です。部署ごとに小出しにすると、修正回数を消費するうえに、後から出た指示が先の修正を打ち消すことがあります。関係者が多い場合は、共有の確認シートを1枚作り、そこに全員が書き込む運用が確実です。

11-4. 制作途中で担当ディレクターが代わることはありますか

制作会社の体制によっては起こり得ます。契約時に、提案を担当した人が進行にも入るかを確認しておくと予防できます。すでに交代が発生した場合は、構成案と絵コンテの意図をあらためて文章で共有し、認識のずれを初稿より前に潰しておいてください。

11-5. 撮影した未使用の素材は受け取れますか

契約に明記がなければ、通常は納品対象に含まれません。第8章のとおり、引き渡しを希望する場合は依頼の時点で取り決めます。アニメーションのイラストデータも同じ扱いです。データ容量が数百GBに及ぶこともあるため、受け取り方法と保管先も併せて決めておくと実務がスムーズです。

11-6. 公開日が動いた場合、工程のどこを止めるべきですか

止めるなら撮影の前です。撮影を実施すると出演者と機材の費用が確定し、制作会社のスケジュールも押さえたままになります。撮影後に止めた場合は、編集を先に完了させてお蔵入りさせるより、納品まで進めて公開だけを遅らせるほうが、再開時の手戻りが少なくなります。

11-7. 途中で実写からアニメーションに切り替えることはできますか

撮影前であれば可能です。ただし企画と構成案から作り直しになるため、5〜10日の巻き戻しが発生します。撮影後に切り替えると、撮った素材が使われず費用だけが残ります。実写とアニメーションのどちらで作るかは、企画書の承認までに確定させてください。

11-8. 3本を同時に作る場合、1本ずつ作るより流れは短くなりますか

短くなります。撮影を1日にまとめられれば、準備と撮影の工程が3本分ではなく1回で済みます。編集は本数分かかりますが、全体では2〜3割の期間短縮が見込めます。ただし企画と構成案は本数分の承認が必要になるため、社内の確認体制とスケジュールを先に整えておいてください。

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第12章 納品はゴールではない|公開後の運用まで含めた動画制作の流れ

第12章 納品はゴールではない|公開後の運用まで含めた動画制作の流れ

12工程を終えて納品を受けた時点では、まだ成果は出ていません。公開先ごとの調整、効果の測定、そして2本目への展開までを含めて設計すると、1本あたりの費用対効果が変わります。

12-1. 公開先ごとに必要な形式|同じ動画のまま出さない

納品された本編をそのまま各媒体へ載せると、それぞれの環境で見づらくなります。媒体別に必要な調整は次のとおりです。

  • YouTube:16:9の本編と、サムネイル、チャプター設定
  • SNSのフィード:1:1または4:5の正方形・縦長、冒頭3秒で内容が伝わる構成
  • ショート動画:9:16の縦型、15〜60秒
  • Webサイト埋め込み:自動再生を想定した無音でも伝わるテロップ
  • 展示会・店頭:ループ再生用に尺を調整、音声なしの前提

これらの尺違いは、本編の編集データが残っているうちに作るほうが安く済みます。納品時に「後日、縦型版を追加する可能性がある」と伝えておくと、制作会社側もデータを保持しやすくなります。アニメーションの場合はプロジェクトファイルが残っていれば差し替えの自由度が高く、テロップや数値の更新にも対応しやすくなります。

12-2. 効果測定で見る指標|再生数より視聴維持率を見る

12-2. 効果測定で見る指標|再生数より視聴維持率を見る

公開後に確認する指標は、目的によって変わります。認知が目的なら再生数とリーチ、理解が目的なら視聴維持率と再生完了率、獲得が目的ならクリック率とコンバージョン数です。

なかでも視聴維持率は、次の動画の企画と構成を決める材料になります。多くの視聴者が離脱している秒数を特定できれば、その直前に何を置いていたかが分かります。配信面での単価や課金の考え方は、「YouTube広告単価の相場を種類別に解説!CPV・CPMの仕組み」で確認できます。

12-3. 2本目の動画制作を早めるための素材の残し方

1本目の撮影で撮った未使用素材は、2本目の制作期間を大きく縮めます。第5章で予備素材の時間を確保するよう書いたのは、この段階で効いてくるためです。

素材が手元にあれば、2本目は企画から編集までを素材編集型の工程で進められます。撮影と撮影準備を飛ばせるため、期間は3週間程度、費用も1本目の3分の1前後に収まります。

広告として配信するなら、訴求違いの複数パターンを短期間で用意できることが成果に直結します。配信を前提とした制作の考え方は「YouTube広告の動画制作完全ガイド!費用相場・成果が出るコツ」にまとめています。

12-4. 改善のサイクルに乗せる|配信データを次の企画へ戻す

動画を広告に使う場合、公開後のデータが次の企画の入力になります。どの訴求が反応を取れたか、どの尺が最後まで見られたかを踏まえて、構成案を作り直します。

このサイクルを回すには、1本を作り込むより、撮影素材を共通化して複数パターンを出す企画設計のほうが向いています。

アニメーションを併用していれば、訴求のフレーズだけを差し替えたパターンを短いスケジュールで追加できます。クリエイティブの検証手順は「【プロが解説】Meta広告クリエイティブの作り方完全ガイド」で、配信を前提とした制作会社の選び方は「動画広告の制作に強いおすすめ会社20選!タイプ別で見る費用相場」で扱っています。

第13章 不可逆ポイントから逆算すれば動画制作の流れは崩れない

第13章 不可逆ポイントから逆算すれば動画制作の流れは崩れない

動画制作は、日程どおりに進むかどうかより、戻れなくなる前に決めきれるかどうかで結果が変わります。最後に、明日からの動き方に落とし込みます。

13-1. 今日の打ち合わせで決めることが、3週間後に直せるかを決めている

この記事で扱った12工程のうち、発注側が本当に力を入れるべきなのは企画と設計にあたる前半です。構成案と絵コンテの2回の承認に社内の意思を集約できれば、撮影以降は制作会社の作業が中心になります。

逆に、前半を流して初稿で本気の修正を出すと、編集では直せない要望が必ず混ざります。そのとき選べるのは、妥協して公開するか、再撮影の費用を追加するかの二択です。動画制作の流れを把握する価値は、この二択を避けられる点にあります。

手元に用意するものは3つです。目的と成果指標を書いた1枚、確認の締切を入れたスケジュール表、そして第8章の5条件を書き込んだ確認シート。制作会社へ問い合わせる前にこの3枚が揃っていれば、初回のヒアリングから絵コンテの確定までを2週間ほど短縮できます。

13-2. 撮影1日から何本を引き出すか|株式会社Grillの動画制作

株式会社Grillは、動画クリエイティブと広告運用の両方を社内に持つ会社です。そのため企画の工程を設計する段階から、納品後にどう配信し、どう作り替えるかを前提に組み立てます。1本を完成させて終わりにせず、同じ撮影から尺違いと訴求違いを引き出す組み方を標準にしています。実写でもアニメーションでも、この考え方は変わりません。

撮影の設計では、絵コンテに必要なカットに加えて、後から使える予備素材の撮影時間をあらかじめ確保します。この積み重ねによって、2本目以降は素材編集型の工程で回せるようになり、リードタイムと費用の両方が下がります。企画の段階から複数本を見込んでスケジュールを引くため、広告として配信する際に訴求パターンを差し替えられる体制も同時に整います。

編集と進行の工程にはAIと自動化ツールを組み込み、文字起こしやテロップ生成といった手作業を圧縮しています。浮いた時間を構成の検討と配信後の検証に回せる構造で、広告運用は最低出稿予算10万円から、手数料は広告費の10%からでお受けしています。業界で一般的な20%と比べた差は、そのまま制作本数か配信量に振り向けられます。

支援してきたのは、BtoB SaaS、人材サービス、美容クリニックのように、映像制作を単発で終わらせられない領域です。「撮影日をいつに置けばいいか分からない」「社内の承認が何往復もして納期が読めない」といった段階からご相談いただければ、工程表の設計と社内の確認体制の組み方から御社と一緒に整えます。

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この記事を書いた人
株式会社epochにてWEB業界のプロジェクトマネージャーとして従事し、デジタル領域での専門性を武器に事業成長を牽引。その後、株式会社LADDERにてWEBデザイナー兼コーダーとして様々な著名インフルエンサーのSNS広告やD2C事業に携わり、LP構成から制作、運用までを一元的に行って広告効果の高いLPを量産。現在は株式会社GrillのWEBデザイナー兼コーダー兼ディレクターとして、幅広い技術を駆使し、HP制作からECサイトの制作、動画制作や編集まで一気通貫で手がけるフロントエンドのスペシャリスト。
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